峰温泉(Mine Spa)
施設名 花舞 竹の庄 場 所 静岡県加茂郡河津町峰字三郎助 源泉名 峰の大噴泉 泉 質 弱食塩泉(緩和性低調性高温泉) 温 度 100℃ pH 8.6 溶存成分総計 2,288mg/kg (Na 630mg, Ca 131mg, Cl 1104mg, SO4 148mg)
お湯の様子 無色透明,無味,芒硝臭,熱め,かけ流し 料 金 1000円 営業時間 15:00〜18:00
海沿いの国道135号から離れ,いよいよ天城越えを目指すことになった。そんな最初に見えた温泉地がここ峰温泉だ。友人が峰温泉にはとても良い場所があるからと事前に某施設に電話交渉するも,この日に限ってポンプ故障で休業中だった。すぐ近くに別の旅館もあるというが日帰り入浴料が1000円と高めで,しかもあまりインターネット上にも情報が無くどんな施設なのか不安がぬぐえない。それでもせっかく来たのだからここは行かねば!ということになり利用させてもらったのがこの竹の庄だ。エントランスや中庭,そして内装と,どれをとっても昭和時代の雰囲気を残す立派な高級旅館の佇まいだ。本来なら15時から日帰り入浴を受け付けているのだが,昼前にもかかわらず快く了承してもらった。1階の大浴場と2階に昔ながらの小さな浴室がある。どちらを利用しても良いと言われたので,当然のごとくどちらも利用させてもらった。
まずは2階の小さな浴室へ向かう。元々男女別の2つの浴室があったらしいのだが今は片方だけを利用している。のれんをくぐり,脱衣所の奥に広がっている浴室ワールドを見てびっくりした。一言で言うと超レトロな昭和浴室だ。床の伊豆石,壁のタイル,窓の格子,天井,どれをとっても昭和初期の手作業による職人の仕事だ。浴槽も鍛え上げられたヒノキを利用したシンプルなものだ。木の樋を伝って,無色透明でピリッと熱めのお湯が注がれかけ流されているのが見える。ううん,この雰囲気だけでやられました。早速脱衣し,お湯に向かった。かけ湯するとピリッとする熱さなのにそんなに気にならない。もしや…芒硝ですか?と半信半疑疑いながら浴槽内にゆっくり身を沈めた。うわあああああああ,ビリビリさし込む浴感にふわりと香る芒硝臭。まさしく芒硝泉ではないですか!顎までとっぷりお湯に浸かる頃には体中の毛穴がビクビクと喜びの声を上げ,全身全て鳥肌が立っているのがわかった。どうやら自分の気持ちよりも体の方が先に興奮しているようだ。湯温はおそらく44℃程度。浴感は48℃くらいある。私に続いて友人が浴槽に浸かった。熱い熱いと言いながらも入ってしまうと無言になり,ふうと息をついた後には至福の表情を見せていた。きっと私と同じような気持ちになったに違いない。さっきまで熱いとか言っていた4人の男達は皆無言になりゆったりと湯の落ちる音のみが響く昔ながらの浴室にとけ込んでいった。すばらしい……。言葉になりません。
そんな私の口から出た一言「J君,今日の湯巡りここで終了しても良いよ…」
本気でそんなことを口走ってしまった。この後七滝温泉,土肥温泉…,いろいろ行きたい温泉地が目白押しなのに,そんな数泉の願望は全部ふっとんでしまった。最初の予定としてはこの竹の庄は20分程度と考えていたのだが,この時点で既に2階の浴室に20分以上滞在していた。
そういえば1階の浴室を味わってくるから…と言って先に出た友人がなかなか戻ってこない。ううむ,もしかすると下もすごいのか?そんな衝動に駆られ,残る3人も階下の浴室へ下った。扉を開けた先には予想通りにまたすごい世界が広がっていた。メイン浴場は新しい浴室だろうと思いきや,昔ながらのタイル造りのこぢんまりした浴室で,左右に2つのブルータイル浴槽が並んでいる。その奥には広々とした庭園露天風呂まである。この景色にまたやられてしまった。先に1階の風呂に来ていた友人曰く「ぼくが戻らないということがどういうことか察してほしかったです。」なるほど。上の浴槽が良すぎたためにすっかり下の存在を忘れていました。早速こちらの浴槽も味わってみた。右側の浴槽がやや熱めで,左側の浴槽が水風呂。まずは右側の浴槽を味わう。先ほど2階で味わったお湯よりもマイルドで柔らかめの感じがする。何だか別物の様な浴感だ。湯口では潮臭も香っている。湯面からは先ほど嗅いだような芒硝系の温泉臭と若干潮臭が混じったような香りだ。今度は露天風呂に向かう。露天風呂は内湯よりも温めで,さらに芒硝臭が薄くなる。あれ,先ほどの浴槽のほうが絶対に良いなぁ。………我々に残された時間は少ない…だとすれば…。意を決して友人に告げる。「出るとき上に呼びに来て。」
すぐさま自分は2階の風呂へ移動し,残りの時間を2階の浴室で過ごした。誰もいないビリッと熱い貸切のお湯に浸かり,昔ながらの窓辺の小あがりで体を冷やす。そしてまた湯に浸かる。体が真っ赤なのになぜか汗は出てこない。これを友人が呼びに来るまでの間繰り返した。賑やかだった1階の露天風呂からの声も聞こえなくなり,そしてついにお呼びがかかった。後ろ髪を引かれる思いでこの浴室を後にした。宿を出る際に女将さんや宿主と話をしたところ,以前は食事付きで2万〜3万程度で宿泊を扱っていたが,人件費がかかり過ぎて宿を維持していくことができなくなってきたのだという。そこで,この昔ながらの造りの宿をそのままの姿で保持していくために,素泊まりのみの形態に切り替えて営業しているのだという。無理な改修はせず,昔ながらの雰囲気を保ちながら,それでいて維持していけるだけの利益を上げる。それを続けるために今のスタイルにしたという宿の決断がすごいと思えた。見た目は純和風の高級旅館だが,1000円の日帰り入浴料を払うだけの価値は十分にあります。河津桜祭りとセットでぜひ訪れてほしいです。
H22/2/6
こちらが昭和7年創業以来使われている昔ながらの浴室。 樋を伝わせて注がせる湯口。 ヒノキ浴槽がすばらしい。年季が入ってます。
こちらが1階にある大浴場。入ってすぐ右側が温泉浴槽。左側が水風呂。 2階の風呂よりも温め。ビリビリ感や芒硝臭はない。 湯口からちょろちょろ注がれる。
こちらが水風呂。ここでは必要なさそうだ。 冬だからか温めの露天風呂。2階のお湯とは全然違う浴感がある。 中央の湯口から注がせていた頃に来てみたかった。