伊東温泉(Ito Spa


施設名 梅屋旅館
場 所 静岡県伊東市猪戸1丁目
<単純温泉共同源泉>
源泉名 岡温泉227号,234号,235号混合泉
泉 質 ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉
温 度 54.7℃ pH 7.9 溶存成分総計 1,063mg/kg

(Na 208mg, Ca 102mg, Cl 248mg, SO4 385mg)

お湯の様子 無色透明,無味,弱芒硝臭+石膏臭,熱め,かけ流し
<食塩泉独自源泉>
泉 質 カルシウム・ナトリウム-塩化物泉?
温 度 38℃程度 pH 溶存成分総計 推定 10,000mg/kg程度

お湯の様子 無色透明,強烈塩味+苦味,潮臭+石膏臭,温め,流しっ放し
料 金 基本的に不可? 営業時間 日帰りはお客が居ないときは受け入れる可能性あり

 伊東市で宿泊先を探した際に一番気になっていてぜひとも泊まってみたかった宿。今回は関東から友人が3名合流し,合計4名で宿泊利用した。駅前の繁華街の裏路地にあり,車で中に入っていくにはかなり狭い道を通ることになる。看板が無ければ見た目がまるで民家のような造りをしていて見間違ってしまう。ここは昔ながらの昭和の風情を残している旅館だ。今回は1泊朝食付きで5000円という設定で利用した。

 チェックインしたのが夜の8時半頃で,そこから伊東市内に一旦出かけ,宿に戻ったのが10時半になってしまった。夜遅くになってしまったが足早に浴室へ向かった。宿にある浴室は,厨房の横にある小さめの浴室,そして奥にある広々とした浴室と2つある。まずは奥の広めの浴室に行ってみた。浴室の扉を開けると,ふわっと石膏臭のような香りが鼻に飛び込んできた。コレですよ!この香りですよコレ!無色透明MT好きにとっては,この香りにときめきを覚えるのです。5人サイズの浴槽からは奥の石組み湯口から注がれたお湯が静かにかけ流されている。誰も浸からずに我々の帰りを待っていた透明なお湯はとてもピュアで,水色のタイルの色がきれいに底まで見えている。お湯はやや熱めの42℃程度で,見ているだけでうっとりしてしまうような無色透明のお湯だ。芒硝成分がちょっとだけ多いがほぼ単純泉に近いお湯で,一応成分分析上は「ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉」となっている。このお湯をまずはかけ湯をして体になじませ,お湯に深く身をを沈めてみた。ふぅ,思わず一息ついてしまうようなピリッと熱いお湯だ。これがまたストレートに体に染みこんでくる。自分が入った分だけお湯が思い切り溢れていくのがわかる。勢いよく溢れたお湯が排水溝にゴボッゴボッと吸い込まれていく音だけが浴室に響き渡り,あれだけピュアだったお湯たちが自分が浴槽に浸かったせいで溢れて捨てられていくのだ…。こう考えてみると何とも言えない贅沢な気分になってしまう。女将さんから浴室の利用は23時までと言われていたが,無理を言って23時30分まで延長してもらった。まさにMT好きにとって,至福の夜である。もう一つの浴室は明朝に味わうことにした。
 次の日の朝は6時に起き,すぐに女湯の方へ向かった。脱衣所も浴室も狭く,2人の利用で精一杯の広さだというのは前日に見て知っていたので,朝早くは友人のJ君と一緒に2人で利用した。浴室に入ってとんでもないことに気づいた。何と浴槽には蛇口が4つほどあり,2種類のお湯が注がれているのだ。しかも,片方の湯口から出ているお湯はホースを伝って,浴槽横の排水溝にそのままかけ捨てられているのだ。これはいったいどうしたことかと思い,そのホースから捨てられるお湯に手を触れてみると…,温い。口に含んでみると…,苦しょっぱい。
こ,これは…どう考えても強食塩泉ではないか。事前に調べていた限りでは,伊東ではこんなお湯は無いはず?と考えながらもう一度お湯を味わってみた。ううん,どう見てもやっぱりこれは強食塩泉だ。浴槽のほうのお湯に手を入れてみると,そちらは昨夜味わったあの熱めでビリビリ感がある単純泉のお湯だ。浴槽に伸びる蛇口に目をやると蛇口には「塩おんせん」「単純温泉」「わかし湯」「水」とそれぞれ書かれている。浴槽の縁からは熱めの単純泉があふれてかけ流され,ホースからは強食塩泉が捨てられている。何とも不思議と思えるこの状況を理解するまでちょっと時間がかかってしまった。気を取り直し,まずは浴槽に身を沈めてみた。お湯が勢いよく溢れていく。昨夜と同じでビリッと熱めの素敵な浴感が肌に染みこんできた。うんうん,そうだよな,この湯だよな,と確認し,今度は捨てられている塩おんせんのホースのお湯を1分ほど熱い浴槽の中に混ぜてみた。すると,さっきまでビリッと刺し込むような浴感だったお湯がとろっとした浴感に変わり,うす塩味の塩化物泉に変身してしまった。これは弱食塩泉の浴感だ。体をやさしく包み込むようなそんなやわらかめの浴感だ。す・ば・ら・し・い・で・は・な・い・で・す・か。一緒にお湯を味わったJ君も,こんなはずではないとびっくりしていた。その後まるまる1時間このお湯を二人で味わい,朝食の時間が来たのでしょうがなく浴室を後にした。
 朝食は大広間でとったのだが,これまたすごかった。朝食とは思えないほど手抜きのない(他が手を抜いているというわけではなく,あっさりしたものが多いという意味)料理が並んでいる。焼き魚はアジ,みそ汁はハマグリ,豆腐とキノコの鍋…。どれをとってもおいしく温かく頂けた。しかも女将さんお手製のティッシュケース,箸の包み紙など,随所に温かさを感じる配慮なのだ。友人と4人で朝食を囲みながらしばし温泉談義に花が咲いた。
 朝食後に,残りの2人が女湯へ行き,出発予定時間を過ぎてもしばらく戻ってこなかったという事実も付け加えておこう。これだけすばらしいサービスとお湯があって,1泊朝食付き5000円というのはありえない設定だ。ちなみにこの「塩おんせん」,この旅館の女湯浴室の地下から湧いている独自源泉で,近所の一般民家2軒と共同で使っているものなのだそうで…,つまりこのお湯を味わうにはここの旅館に入るしかないということだ。レポを読んでみて気になった人はぜひ宿泊で利用してみてほしい。

H22/2/5泊



こちら普段は男湯として利用している浴室。 広々とした空間に美しい水色タイルが映えます。        奥に見える湯口は石組みのもの。


こちら普段は女湯として利用している浴室。    何やらごちゃごちゃと湯口が…。左から独自源泉,共同源泉,真湯,真水…。  普段は捨てられている塩温泉。


宿泊で利用した10畳の部屋。十分すぎる広さです。  手抜きのない素晴らしい朝食。  箸を包む紙は,包装紙などを再利用した女将さんお手製の折り紙方式。