湯ヶ野温泉(Yugano Spa


施設名 福田家
場 所 静岡県加茂郡河津町湯ヶ野
源泉名
泉 質 カルシウム・ ナトリウム-硫酸塩泉
温 度 59.1℃ pH 8.8 溶存成分総計 1,321mg/kg

(Na 186mg, Ca 206mg, SO4 792mg)

お湯の様子 無色透明,無味,石膏臭+温泉臭,適温,かけ流し
料 金 1000円(両方) 営業時間 10:00〜16:00

 河津町湯ヶ野温泉でおそらく一番有名な旅館で日本秘湯を守る会の会員宿。川端康成が小説「伊豆の踊子」を執筆したことで有名な老舗旅館。遊歩道のようなコンクリート道路を通り,木製の橋を渡った先に昔ながらの佇まいでひっそりと建っている。川を渡る手前側には温泉楼というこれまた老舗旅館が建ち,その建物の一部に小説の中に登場する共同浴場もある。
 福田家には2ヶ所浴室があり,どちらか片方を利用するなら700円。両方利用するなら1000円を払うという仕組みだ。今回は最初で最後の利用になるかもしれないので迷わず両方入ることにした。

 まずは岩風呂&露天風呂の方に向かった。こちらはちょっとだけ奥に進んだ場所にあり,男女別ではなく混浴風呂となっている。宿泊者は貸切利用できるようになっている。脱衣所からは岩風呂にも露天風呂にも行ける造りになっており,岩風呂と露天風呂も行き来できる。岩風呂は新しめの造りで,岩を組んだ味わいのある浴槽に無色透明なお湯が注がれかけ流されている。ふんわりと温泉臭が香るお湯で,やや熱めの適温に調整されている。これはこれでなかなか良いお湯だ。その足で露天風呂へ向かった。露天風呂は小さな庭園の様なものの中にあり,斜面には蜜柑の木もある。蜜柑の木と露天風呂の水色のコントラスト(左写真)がとても素敵だった。お湯自体は温めで,長湯するには良さそうだ。もう一度岩風呂に入って体を温め,今度は榧(かや)の湯に向かった。この榧の湯は別名「伊豆の踊子湯」とも呼ばれ120年間の長い年月そのままの姿を保ち続けた歴史ある浴室だ。浴室の扉を開けるとそこには先ほどの岩風呂とは明らかに違った異空間が広がっている。階段を下り下へ下るアプローチのその底に伊豆石を敷き詰めたこぢんまりした浴室空間が広がっている。壁に埋め込まれたタイルアート,石にぴったりとフィットしている木組みの浴槽,そして静かにかけ流される透明でサラサラしているお湯。ううん,この光景にしばしうっとりしてしまった。階段を一段ずつ下っていく毎に徐々に感動が高まっていく。かけ湯をして,早速お湯に身を沈めてみた。4方向に静かにあふれ出ていく石膏臭が香るお湯は,真っ平らな伊豆石の床上をすべるように流れていく。体をすっぽりと浴槽内にうずめ,高い天井を見上げてみると,先ほどまで脱衣所の目の前の高さにあった窓がずいぶん上に見える。そのことからかなり浴槽が地下に潜っているのがわかる。窓からは緑色と明るい光が混じって優しい光を放っている。あの窓が小説の中で「共同浴場を川越しに覗いた窓」なのだと思うと,ついつい不思議な気分になってしまう。湯温はやや熱めの適温で,長湯しても全然平気そうだ。上がる間際に伊豆の踊子の小説内に出てくる一節のように「壁によじ登って窓から外を眺めて」みたが,生い茂る草木のせいで共同浴場は見えなかった。
 2つある浴室でどちらを選びますか?と聞かれると迷わずこちらでしょう。万が一また来る機会があったら,まっすぐこの榧の湯へ突入すると思います。この地区の近くを訪れた際は,ぜひとも訪れたい1湯です。

榧風呂時間割(宿泊の場合)
   女性専用 16:00〜17:30,6:00〜7:00 男性専用 17:30〜19:00,7:00〜8:00
   自由に貸切 19:00〜 6:00,8:00〜10:00 それ以外の時間は日帰りも可 

H22/2/6


  
岩風呂浴槽。雰囲気は良いが,あえてこちらに入る必要は無いかも?  湯口はパイプからも注がれている。  こちらが付随する露天風呂。温めです。   

  
120年ほどの歴史を誇る榧(かや)風呂。階下へ下るアプローチも素敵。  透き通ったお湯が印象的。浴槽内は木造です。   だんぜんこちらの方が味があります。   

  
湯面に顔を埋め,湯口方向を臨む。  こちらの高い窓が「伊豆の踊子」に出てくる共同浴場を覗いた窓。   木の橋を渡るアプローチが素敵でした。