湯岐温泉(Yujimata Spa


施設名 天然温泉 岩風呂
場 所 福島県塙町湯岐字湯岐
源泉名 湯岐温泉(山形屋旅館)
泉 質 単純温泉
温 度 38.7℃ pH 9.6 溶存成分総計 175mg/kg
(Na 41.3mg, CO3 33.1mg, HCO3 24.5mg)
お湯の様子 無色透明,無味,弱芒硝臭,足下自噴,温め,かけ流し
料 金 300円
 1日だと500円
営業時間 6:00〜21:00,(21:00〜22:00が女性専用タイム)

 福島県の中で一番南の外れにある温泉地。郡山からもいわきからも行きづらいため,いつも湯めぐりのルートから外れていた。今回は旅のメインをこの湯岐に置き,湯岐へ行くついでにどう廻るかを考えて万全のプランを立てた。朝の5時半に那須湯本を旅立ち,茨城の温泉を経由して9:00には湯岐温泉にたどり着いた。どんな場所かと思いきや,本当の山中だ。入口から上へ向かってヘアピンカーブを登り,その途中に和泉屋がある。カーブを登り切った場所には薬師神社があり,そこから下へ下った所に井桁屋,そして山形屋がある。この湯岐温泉は山奥の崖沿いにある温泉地なのだ。

 山形屋の敷地内に共同浴場代わりとして使われている「天然温泉岩風呂」がある。山形屋の受付に料金を支払いいざ岩風呂へ向かった。この岩風呂は原則混浴となっており,女性専用時間は夜の1時間しかない。混浴が苦手な人は無理をしない方がよいだろう。今回先客としておじさんが1人とおばさん1人,おばあさんが1人いたが,お互いあまり気にしていなかったようなのでこちらも気にせずにお邪魔させてもらった。早速お湯に浸かってみると,無色透明なお湯は温めでほぼ体温と同じ温度か若干それより熱いくらいの温度だ。そしてこのお湯が体に絡みついてくるように柔らかい。こんなにやわらかくて優しいお湯は自分自身初めての経験かもしれない。湯面からはうっすら芒硝臭にも似た甘い温泉臭も香ってくる。しばらくじっとしていると体に細かい泡が付いてくる。これは何度払っても払っても新しい泡がどんどん付いてくる。つまりそれだけ湯が新鮮だということだ。何せ,ここは浴槽を大きく陣取っている背後の岩の下からお湯が自噴しているのだ。つまり岩に沿って走る裂け目から静かにお湯が浴槽内で自噴しているのである。時々岩づたいに小さなアブク玉がコロコロと上がってくる(右写真参照)。足下から自噴しているポイントは浴槽を深く掘り下げているために,他の場所よりも深くなっている。背後の岩に寄りかかり,そのまま目を閉じてじっとしていると極上な気分を味わうことができる。そのまま目を閉じているとついつい寝てしまいそうだったので,足場として椅子になっている漬け物石を配して固定し,寝てしまっても大丈夫なように万全の状態をセッティングした。(実際にその後10分くらいは意識が無かった)気がつくと他の浴客はおらず完全貸切状態となっていた。この湯にいったい何分浸かり続けたのだろう。もう40分くらいは浸かっているような気がする。それなのに肌がふやけたり,湯疲れしたりしないのだ。本当に不思議なお湯だ。一度汗を出そうと思い,湯から上がって浴槽の様子をもう一度観察してみた。
 岩の隙間以外に浴槽の中央にパイプが1本のびており,そこから湯量を補うために山の上で掘った新源泉を加えている。そのお湯も温めでちょうど良い温度だ。岩風呂浴槽の右には小さなタイル浴槽があり,そこは寒いときなどにボイラーで加温できるようになっている。ここは主に上がり湯として使われているようだ。その浴槽からのこぼれ湯も岩風呂に注いでいる。小さい浴槽から岩風呂にお湯が落ちていく音以外は蝉の鳴き声しか聞こえない。改めてここのすばらしさを実感した。
 浴槽の縁でボーッとしていたがあまり汗が出てこない。またお湯に体を沈めた。ふぅ,ここは本当にいつまでも居たい気分になってしまう。結局,1回入浴は1時間以内となっているのを知らなかったため1時間以上この浴室を味わってしまった。湯上がり後,山形屋の旦那に「ホント好きなんだねぇ,長く入っていたもんね。」と微笑まれた。その後,旦那からいろいろ湯岐にまつわるお話やお湯の話を伺うことができた。

 お湯良し,人良し,風情良しと3拍子揃っている湯岐温泉は自分のお気に入りの一つになりました。今年中に再訪したいという気持ちで一杯なのですが,何せ遠い…。でも今度行く際にはやはり宿泊でみっちりとあのお湯に浸かり続けたいと思いました。遠いですが,ここまでは行く価値はあります。特に,温めの足下自噴単純泉がお好みの人にとってはマストでしょう。

H18/8/16


  
こちらが岩の間から注がれる名物岩風呂。   この岩の下からじわじわと湧いています。  湯量不足のため若干のつぎ足しもある。

  
くぼんでいる場所全体の岩の間からお湯がぷくぷくと湧き出している。  底に沈むイス代わりの漬け物石。  かけ流しスポットに静かに流れ落ちる。

  
こちらが加温浴槽。夏は正直不要だ。冬にその実力を発揮する。   加温湯の溢れがそのまま岩風呂へ注がれる仕組み。   当然シャワーも温めの源泉。