横向温泉(Yokomuki Spa


施設名 瀧川屋旅館
場 所 福島県猪苗代町若宮
源泉名 -
泉 質 単純温泉
温 度 pH 溶存成分総計
お湯の様子 うっすら濁り,ぬるめ,アブラ臭+金気臭,炭酸味+塩味, 足下自噴,かけ流し
料 金 日帰り不可 営業時間

 国道115号線から横道にちょいとそれただけの場所にある土湯峠の温泉の一つ。横向温泉には3つの旅館があり,山麓側から,下の湯「瀧川屋旅館」中の湯「中の湯旅館」「マウント磐梯」と建ち並ぶ。中の湯とマウント磐梯は日帰り設定があって日帰り入浴ができるが,この瀧川屋旅館は宿泊客以外の入浴は受け付けていない。し・か・も,1日にたったひと組の客しか受け入れてくれないことになっている。今回は「瀧川屋を守る会会員」の紹介を経て正式に予約をいれ,念願の宿泊で利用することができた。

  
入り口にある「入浴のみのお客様はお断り」の看板。   広い部屋を2つ準備してくださり,片方を飲食部屋に,片方を寝室として利用させてもらった。

 到着が大きく遅れたにもかかわらず,宿主のおばあちゃんは温かく出迎えてくれた。入り口の引き戸を開けるとすぐに大きな岩が聳えているのが見える。これは丘陵地にそのまま旅館を建設したためで,旅館の至る所に岩が露出しているのが特徴的だ。自然のままの地形をそのまま利用しているところにまずは感動した。さっそく部屋に案内され,本日ひと組のみの利用と言うことで心ゆくまで浴室を堪能することにした。

  

 旅館内部は細部まで手入れが行き届いており,外観から見た感じとは異なって隅々までピカピカに磨かれている。柱や階段などは,まるで今年改装したばかりにも見えるくらい丁寧に管理されている。木のぬくもりと間接照明の妙で,実に幻想的な空間を醸し出している。上の階に上がると「瀧川屋ぎゃらりい」があり,昔ながらの写真や道具が展示してあった。

 夜遅くなってから2つある浴室へと向かった。長い階段を降り,そこからさらに混浴浴室へと階段を降りていく。すると,薄暗い照明の奥にシンプルな木造の浴室が見えてきた。以前に写真でお目にかかったこれぞ正真正銘の瀧川屋ワールドがそこに広がっている。浴室内なのにさらにそこに屋根があるという実に風変わりな,そして風情のある浴室だ。浴室内からはアブラ臭+金気臭の芳醇な香りが我々を手招きしている。お湯というよりも,まずこの佇まいで感動してしまった。2つある浴槽の奥がやや熱めの41℃。手前がぬるめの39℃だ。浴槽の底からポロンと時々大きなアブク玉が上がってくる正統派足下自噴温泉だ。奥の浴槽は近くで自噴する別源泉をお社湯口から継ぎ足している。奥の浴槽は鮮度が高いため透明なお湯で,手前の浴槽は時間が経ったせいか,若干濁りを呈している。赤茶色の湯花が浴槽内にふわふわと舞っていた。ゆっくり身を沈めると,やわらかい包み込むような浴感で,鼻の奥に金気臭やアブラ臭がじわっと染みこんでくる。もう,これだけで幸せである。暗い浴室内にぼんやりと照明で浮かび上がる幻想的な風景にとけ込みながら,じっくり2時間ほどこのお湯を楽しんでしまった。女湯のほうは見学だけにとどめ,寝る前にもう一度この混浴のお湯に浸かったことを付け加えておこう。

  
こちら夜に見た美しい風景。すばらしい風情です。   こちらやや熱めの源泉を継ぎ足す湯口。    そして時々上がってくる湯玉たち。手前のぬるめ浴槽。

 朝6時台に起き,まずは昨晩入らなかった女湯へと向かう。女湯は別源泉らしく,混浴浴槽よりぬるめの温度だ。アブラ臭は弱めで,金気臭が混浴のお湯より若干強めのお湯で,たくさんの赤茶色湯花が沈んでいる。友人からは「寝るならこの浴槽がベストだよ。」と言われていたので実際にチャレンジしてみると…。39℃程度のやわらかい温めのお湯と,足を伸ばすと小振りな浴槽にちょうどよく収まるシチュエーションが本当の眠りを誘ってくる。ううん,ここは罪作りな浴室だ。20分ほど味わい,また昨晩と同じように混浴浴室へ向かった。そこからまたあの風情ある浴槽でじっくりとお湯を味わった。
 よく考えてみると,瀧川屋旅館に泊まって布団に入った時間とお湯に浸かっていた時間を比べてみると,明らかにお湯に浸かっていた時間の方が長いことがわかった。混浴4回で通算4時間弱,女湯1回20分。夜遅くまで友人と語り合っていたために睡眠が3時間程度になってしまったので,布団の中よりも浴室でお湯に浸かりながら長旅で疲れた体を休めたかっこうになった(笑)

  
こちらが朝にゆっくりとお湯を味わった際に見た「かけ流しの様子」   女湯はこぢんまりしたサイズ。ここも若干足下自噴です。 湯花がとても美しいです。

 それにしても実に不思議なお湯でした。塩気がある鉄系のお湯なのに長湯をしても疲れず,それでいてじっくり温まるお湯なのです。噂通りのすばらしいお湯で,日帰りではなく宿泊で利用する価値が十分にあることがわかりました。間違いなく近いうちに家族で再訪することになるでしょう。この良きお湯を守り続けている宿主,そしてそれを様々な方面から支える「瀧川屋を守る会」の人々,そしてこんこんとわき出てくるお湯に心から感謝したいと思います。

H21/10/31 宿泊